物忘れ・認知症外来
物忘れ・認知症外来
どなたでも年をとっていくと物忘れが増えてきます。この物忘れには単なる加齢による生理的な反応(良性健忘)もありますが、軽度認知障害(MCI:健常と認知症の中間段階)や認知症の初期段階の場合もあります。いずれかを見極める診断が非常に大事になってきます。
加齢による物忘れと認知症の症状としての物忘れの違いは物忘れを認識(自覚)できているかどうかです。
などあるが、今まで通りの暮らしができており、物忘れに対して認識(自覚)があることが特徴です。
認知症とは正常に働いていた脳の機能が低下し記憶や思考への影響が見られる疾患です。認知症になると物事を記憶することや、判断する能力、時間や場所、人などを認識する能力が下がるため日常生活に支障が生じてきます。2025年、65歳以上の高齢者のうち認知症の人は5人に1人に増加すると予測されています。さらに、軽度認知機能障害(MCI)の人は認知症の人と同数程度いるとも言われており、認知症対策は社会的に緊急の課題と言えます。
このような症状が見られたら一度検査をすることをお勧めします。しかし、認知症かどうかはご自身では気づかないことも多いため、周囲から受診を勧められた時には気軽に検査を受けるようにしましょう。また、ご家族にこのような症状があった場合にはご本人が抵抗なく検査を受け入れられるように配慮しながら受診を促すようにしてください。
認知症にはいくつもの種類が知られています。主な疾患として4つありますが、そのうちの約60〜70%ほどがアルツハイマー型認認知症で約20%は脳血管性認知症と言われており、約80〜90%がこの2代疾患で占められています。その他にはレビー小体型認知症と前頭側頭型認知症など特殊な認知症があります。いずれもできるだけ早期に適切な治療を受けることが重要です。
軽度認知機能障害(MCI)は健常者と認知症の中間の段階を指します。記憶力や注意力などに低下が見られている一方で、日常生活に支障をきたさない状態です。
軽度認知機能障害(MCI)を放置すると約半数が5年以内に認知症に進行することが分かっており、軽度認知機能障害(MIC)の時点で適切に対処することで、アルツハイマー型認知症発症を防げる可能性があります
アルツハイマー型認知症は日本人で最も多い認知症で、全体の約6〜7割を占めています。アルツハイマー型認知症はアミロイドβ(ベータ)ペプチドなどの特殊タンパク質が脳に蓄積し、それにより神経細胞が壊れて減ってしまうために脳の神経がうまく伝えられなくなり機能異常を起こすと考えられています。神経細胞が死んでしまうことで脳そのものも萎縮していき、脳の指令を受けている身体能力も徐々に失われていきます。アルツハイマー型認知症は男性より女性に多く見受けられます。
脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など脳血管障害によって脳の血管が詰まったり、出血したりして脳細胞に酸素が十分に行き届くなり神経細胞が死んでしまうことによって発症する認知症です。脳血管性認知症は脳卒中を契機に症状が突然悪くなるというような悪化の仕方をすることや、脳の小血管病変のために徐々に悪化する場合があります。障害を起こした部位によって失われる機能や症状が異なります。また、ある分野のことはしっかりできるのに、他のことでは何もできないなど、まだら認知と呼ばれる特徴があります。脳血管性認知症の人は脳血管障害にかかったことがあり、さらに高血圧、糖尿病、脂質異常症、心疾患など脳血管障害の危険因子を持っていることが多いのも特徴です。
認知症は他にもレビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などの特殊な認知症があります。
その他、脳血管障害、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、正常圧水頭症、外傷(けが)、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症などは認知症と同じような症状をきたすことがあります。
物忘れ外来ではまずは物忘れか認知症かを判別するために次のような検査を行います。
いつ頃からどのような行動に違和感を覚えたのか、そして症状は進行しているのか、現在困っていることは何か、これまでかかったことのある病歴や現在の健康状態、今までの教育歴、職業歴、趣味や生活習慣などの生活歴、現在内服している薬などを尋ねます。頭にけがをしたことがある方は、その時の外傷が認知症を引き起こしている可能性があるので、転倒して頭をぶつけた既往がないかを確認します。
知的機能や認知機能、記憶力、実行機能を確認するため、簡単な質問(今日は何月何日ですかと尋ねたり、簡単な計算問題をする)を投げかけて、脳の働きをチェックします。(改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)、ミニメンタルステート検査(MMSE)など)
MRIやCTなどの画像検査を実施して、脳の海馬の萎縮(VSRAD、MRI)や脳出血、脳梗塞などの脳血管障害やその他の器質的な脳疾患の有無を調べたりします。
認知症か物忘れ以外の別の病気かを鑑別するために血液検査などを実施することもあります。
こうした検査を定期的に受けて頂くことで、認知症の適切な予防と早期発見、治療が可能になります。また、脳血管性認知症の発症や進行には動脈硬化も大きく関わっていますので、そうした既往歴もトータルにサポートし患者さん個々に合った薬物療法や非薬物療法(昔の出来事を思い出してもらう回想法や計算ドリルをする認知リハビリテーション、音楽を鑑賞したり演奏したりする音楽療法、花や野菜を育てる園芸療法、ウォーキングなどの有酸素運動を行う運動療法、動物と触れ合うペット療法など)を提供してまいりたいと思っています。