頭痛外来
頭痛外来
多くの方を日常的に悩ませる頭痛。「私は昔から頭痛持ちだから」「頭痛くらいで」という思いからあきらめて医療機関を受診せず、市販薬を服薬して様子を見ている方も多いかと思われます。また、周りが辛さを理解してくれず、さぼっていると思われたり、受診しても「異常がないので痛み止めを飲んでください」と言われ、痛み止めを飲み続けたりして様子を見ている方もいると思います。頭痛はひどくなると仕事や家事など生活に支障をきたす場合もあります。頭痛薬を飲み過ぎてかえって頭痛を誘発する場合もあります。頭痛にはさまざまな原因がありますが、まずは「命に関わる緊急性のある頭痛」かそうでない「一般的な頭痛」であるかを見極め、個々の頭痛の種類に応じて適切な治療を施す必要があると思います。
当院では脳神経外科専門医が医学的に診察をし、検査、診断し生活指導や薬の処方を行います。慢性的な長引く頭痛、気になる頭痛、いつもと違う頭痛などがありましたらいつでもお気軽にご相談ください。
頭痛は、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分けられます。「一次性頭痛」とは原因となっている疾患が見当たらない「頭痛そのものが病気」の頭痛(慢性頭痛)です。一方、二次性頭痛は他の疾患が原因となり起こる頭痛(危険な頭痛、症候性頭痛)です。一次性頭痛の場合には比較的時間をかけて治療も可能ですが、二次性頭痛の場合には命に関わることもあるため原因となる疾患を迅速に発見し治療することが重要です。一次性頭痛には片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、薬物乱用性頭痛などがあり、二次性頭痛にはくも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、脳動脈解離などがあります。
片頭痛は脳の血管が急に拡張することによって頭の片側がズキッズキッと痛くなると考えられていますが、実際には片側約60%、両側約40%と両側に出現する人も多くいます。またズキッズキッと拍動性の頭痛を伴う人は約60%位で約40%の方は拍動性の痛みはなく頭重感のみがある方もいます。また、片頭痛の患者さんの約80%の患者さんは緊張型頭痛を持っていると言われています。男女比は1:4で圧倒的に女性(20〜40代)に多い疾患で、日本人全体での片頭痛の有病率は約8.4%と報告されています。
片頭痛が発生する機序はまだ完全に解明されていませんが、ストレスやストレスからの解放、疲労、天候の変化、睡眠の変化、体内ホルモンの変動など心身のリズムが崩れたときに、起きやすくなります。この動きに重要な役割を果たしているのがセロトニンという物質です。このセロトニン濃度が低下して血管拡張をきたし拍動性頭痛をひき起こすとも言われています(血管説)。また、光や音、においなどさまざまな刺激によって三叉神経が刺激され、その末端から炎症を起こす物質(CGRP:血管を拡張させる性質を持つタンパク質)などが出ることによって脳硬膜の血管のまわりに炎症が起こり、その刺激によって血管が拡張し痛みが起こるという考え方もあります。(三叉神経血管説)
このような特徴がある場合には片頭痛の可能性が高いと思われますが、全てなくても片頭痛の場合はあります。頭痛が軽い場合には通常の鎮痛剤でも、ある程度抑えられることもありますが、痛みが改善しない場合にはトリプタン製剤等の特殊な頭痛薬を使用したり、発作の頻度が多い場合には発作自体を減らす予防薬(カルシウム拮抗薬、抗てんかん薬、β遮断薬、抗うつ薬など)を使うこともあります。さらに近年では片頭痛の病態に、前述したCGRPが関与して頭痛をひき起こすと言われており、その仕組みを利用して開発されたものが、抗CGRP抗体薬です。この薬を皮下注射することでCGRPの放出を抑え、片頭痛の発生回数を大幅に抑える効果が認められています。2021年からは健康保険適応の治療が行えるようになりました。
緊張型頭痛は頭痛の中で最も頻度が高く、肩こりからくる頭痛と呼ばれているものです。肩こりがあると後頭部が張って重たい感じ、こめかみが締め付けられるような感じ、頭に金属の輪をはめられたような感じなど、さまざまな頭痛が長時間続きます。肩や首の筋肉がこって、その付近の血管が過度に収縮し神経が刺激されることで痛みが生じます。筋肉の緊張、精神的、肉体的ストレスや疲労、運動不足、デスクワークなどの長時間の同じ姿勢などが誘因となりますので、ストレスの解消を心掛け、入浴、運動、ストレッチ、マッサージなどを行い血管を拡張させ筋肉の緊張を緩和させれば頭痛に効果的です。
群発頭痛は目がえぐられるような激しい頭痛が片側の目の周りからこめかみに出現し、15分〜3時間くらい程度で無くなります。同時に頭痛がある側の目が充血したり、涙が出たり、鼻がつまったり、鼻水が出たりします。あまりの痛さのため、静かにじっとしていられません。発作は天候に左右される事もあり毎年決まった時期に年に1〜2回程度発症し2週間〜3ヶ月程度頭痛を繰り返します。発作は2日に1回から1日に何回も起きることもあります。発症メカニズムは眼の後ろを通る脳の血管が拡張して痛みが起きていると考えられています。患者数は比較的少ないのですが、20〜30代の男性に多く見られる傾向があり、アルコールにより頭痛が誘発されます。通常の鎮痛剤はほとんど効果がなく、頭痛発作時にはトリプタン製剤の注射や内服、純酸素吸入を行うことで頭痛は改善しますが、発作期間中は何度も頭痛発作が起きます。
頭痛持ちであった人が頭痛薬を使い使い過ぎてしまい、その頭痛薬をさらに服用し続けることにより、逆に頭痛が起きてしまう状態を薬物乱用性頭痛といいます。頭痛は月に15日以上あり、3ヶ月を超えて定期的に鎮痛薬(1ヶ月に10日以上もしくは15日以上)を服用していることにより起きます。
対応としては思い切って鎮痛薬を一気に止めてしまい、現在の頭痛が本当は何であるかを適切に診断し、治療につなげることが重要です。
二次性頭痛は他の疾患が原因で起こる頭痛であり、命に関わることもあるため原因となる疾患を迅速に発見し治療することが重要です。見逃すと危険性が高い病気には、くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、脳動脈解離などがあります。今までに感じたことのない激しい頭痛が突然生じたり、頭痛が長時間続き徐々に強くなったり、いつもと違う頭痛などがありましたらいつでもお気軽にご相談ください。